FASTの成長は継続的
これまで過去2回「 FASTを知る 」と題し、ご紹介してきた FAST (Free Ad-supported Streaming TV/広告付き無料ストリーミンTV)。その注目は米国だけにとどまることなく、欧州でもさらに高まってきています。日本国内は今後どうなっていくのでしょうか。
さて、プログラBLOGでこれまで数多く参考に、引用もさせていただいているVariety Intelligence Platform(VIP+)のシニアメディアアナリストであるGavin Bridge氏の「The FASTMaster」が、米国FASTチャンネル数の状況をアップデートしました。FASTMasterは、FASTに関する各種情報を定期的に更新しており、プログラマティカではそれをウォッチしていますが、どうやらBridge氏がVIP+を去ることになったようです。今回はその最新アップデート(2023年9月16日付)をご紹介してみようと思います。ただ、FASTに関する貴重な情報発信元のひとつであるFASTMaster自体は継続されるようですので、少し安心しています。
また、おそらくVIP+としては最後となるBridge氏のウェビナーがLinkedIn Liveで2023年9月20日(火)午後3時*(米国東部標準時)に開催されます。開催日が迫っていますが、ご興味ある方は、ぜひ参加されてみてはいかがでしょうか。
Variety VIP+ Webinar 「FAST Fortune Telling」
Tuesday, Sept. 19, 2023 | 3 P.M. EST(Noon PST) on LinkedIn Live
*日本時間2023年9月20日(水)午前4時〜
FASTチャンネル 、2023年9月最新状況
FASTMasterが注目した最新のポイントは、以下の通りです。
- Freeveeが初めてキッズ向けチャンネルを追加しました。クラシックな(往年の)コンテンツである「Transformers」と「Power Rangers」です。しかし、「Kids」*という分類にはなされていません。
*Live TVの「ファミリーステーション」に分類される。ただし、オンデマンド(Free with ads)にはキッズカテゴリーあり - A+E Networksは、Samsung TV Plusで5つの独占的な「シングルIPチャンネル」を開始しました。あまり取り上げられていないですが、Samsungは今年のニューフロントのイベントでこの発表を行なっており注目に値します。
- Inside Editionも、Local NowにシングルIPチャンネルを立ち上げました。今後、さらにチャンネル数が増えることが期待されます。Local Nowにとってもとても良いニュースといえるでしょう。
- PBS*が「PBS Food」を立ち上げ、FAST領域をさらに掘り下げています。近いうちに15以上のPBSブランドのFASTチャンネルが登場する可能性があります。
*Public Broadcasting Service:米国の公共放送ネットワーク(非営利)で会員数は349局 - VixとLocal Nowが、EPG(電子番組表)のジャンル順を変更しました。Vixはニュース、スポーツチャンネルの順でEPGのトップに置き、逆にLocal Nowは、全米のローカルニュースを数の上でリードしてきたFASTですが、そのローカルニュース群をEPGの一番下に移動しました*。
*ただし、「My City」(居住地)はトップのままで「More Cities」(その他エリア)が一番下に
500チャンネルの提供が目前に迫る
最も注目すべきニュースは、ひとつのFASTサービスが全米で500チャンネルを提供するようになってきたことです。現在、最大のチャンネル数を持つPlexが500チャンネル提供目前です。Plexは年間比較で視聴者数が54%、視聴分数も135% 増加しています。
*文末にPlexの「試し見」のご案内あり
ふたつめに、FASTMasterが提供しているデータの中で、「定番」であるチャンネル数の最新推移チャートです。2019年〜2020年初頭から現在までが比較可能で、各FASTのチャンネル数の変化が一目瞭然となっています。直近まで圧倒的なチャンネル数だったLocal Nowを抑えてPlexがトップに躍り出ました。また、The Roku Channelも急速な伸びを見せています。
FASTMasterでは、最近に見かけるようになったFASTチャネルの減少/成長に関するデータの中には、その根拠が乏しいモノもあるため注意して閲覧することを推奨しています。FASTMasterが発表するデータでは、Freevee、Plex、Samsung TV Plusのチャンネル数が大幅に増加しています。Vixは大きく削減しましたが、これは1つか2つのサービスで放送されていたチャンネルがまとまって削減されるという、FASTチャンネル数の変動トレンドの一部といえます。
FASTチャンネルの総数は、最終的に9月は前月比で減少しました。しかし、それは1チャンネルのみです。FASTの成長はまだ続いています。 たしかに、小さなプラットフォームで配信されていたいくつかのチャンネルが、FASTのブランド化が進むにつれて削除されていくということはありますが、FASTブームは終わっていません。その証拠に、チャンネル数は1,835*と、昨年9月の1,464から371チャンネル増加しており、依然として巨大な数字となっています。
* 複数のFASTサービスで利用可能なチャンネルの重複を除く(総数では4,000チャンネル以上)
原文:FASTMaster: September 2023 Update
*プログラマティカにて翻訳、注釈および資料など加筆
チャンネル数でトップとなったPLEXは国内からでも視聴可能
「いつでも無料」「世界中で利用可能」を掲げるPlexのFASTサービス
参考までに、もし、まず先に FAST を試し見してみたいと思われる場合は、「Plex」がVPNなどを介さなくても日本国内からもアカウント登録とコンテンツ視聴が現状でも可能*1です。コネクテッドTV以外にもスマホアプリやPCなどにも対応しており、日本語設定もすでに選択できるようになっています。米国仕様と日本国内からでは視聴できるチャンネルに若干差がありますが(特にMusicチャンネルなど)、逆に挿入されるCMは日本向けにまだ(ほとんど)ローカライズされていないので、手軽に「リアルなFAST視聴体験」をしてみるにはちょうど良いかも知れません*2。ただし、アカウント登録およびコンテンツ視聴などはご自身の意思と責任範囲の中で行うことを事前にご了承ください。なお次のリンクは、アフィリエイトリンクではありませんのでご安心ください。https://www.plex.tv/
*1 2023年9月17日時点で確認
*2 PCでのアクセスが簡便だが、AmazonのFireTVなどからアプリ経由で視聴するとその操作性などの感覚も体験できる
Programmatica Inc.
Yoshiteru Umeda|楳田良輝
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