テレビCM量には上限がある
ふだんテレビで見るCMには、いろいろな長さのモノがあります。よく見かける15秒や30秒CM以外にも、60秒や90秒、時には120秒という長尺CMに出会うことさえあります。面白いCMや、自分が興味のある商品やサービスのCMだといいのですが、そうでない場合はチャンネルを変えたくなります。購読料として我々も一部の費用を負担している新聞や雑誌などと違い、テレビはCM(企業からの広告費)がないと放送自体が成り立たないとわかってはいても、そこは人の性(さが)、やはりCMを避けたい気持ちになることも少なくありません。
特に最近は、NetflixやHuluなどのサブスク型(サブスクリプション)や、都度課金型でコンテンツ(映画やライブなど)を購入して、テレビ画面を通して観ることにも慣れて来ているので、より煩わしさを感じるのかも知れません。TVerやYoutubeはほぼ広告付きですが、まだまだテレビほどCM量が多くない気もしています。スキップできる場合もありますから。
ここまではひとつひとつの番組やコンテンツの中でのCM量、あるいはCM自体の長さの話。では、テレビ放送全体でテレビCMってどれくらいの量があるのか?気になります。今回はその辺りを少しまとめてみます。
実はテレビCMの放送時間(量)には上限があります。日本民間放送連盟*(民放連)では、テレビCMの放送時間は週間の総放送時間の18%以内と放送基準を定めているのです。ここから試算してみると、テレビCMの総量は、1週間168時間(24時間×7日間)のうち「30.2時間以内」ということになります。これが多いのか少ないのかは、正直、判断が分かれるところですが、米国でのテレビCM状況と比較すると日本の場合は概ね、その半分程度のCM量となっているようです。
*日本民間放送連盟(民放連)
基幹放送を行う全国の民間放送事業者を会員とする一般社団法人。正会員204社で構成されている(2020年12月現在)。基幹放送とは、無線放送用に割り当てられた周波数を使う放送のことで、地上基幹放送(AM、FM、短波、テレビ)、衛星基幹放送(BS、東経110度CS)など 〜民放連サイトより抜粋〜
意外と多い海外のテレビCM量
少し古い話になりますが、ジャック・バウアーでおなじみの「24-TWENTY FOUR-」(米国FOXが放送した本国版)では、毎話が1時間のリアルタイムでストーリーが展開します。CMに入る前のデジタル時計(24時間表示)の表示時間と、CM明けの表示時間を見比べると3〜4分程も間隔が空いていて、当時ビックリした記憶があります。すべてを合わせると15分間(比率で25%)くらいのCM量があった計算となるでしょうか。
米国のテレビCMは、番組(コンテンツ)と共にネットワークで流れてくるテレビ局側が持つCM枠以外にも、各家庭が個別に契約しているケーブルテレビ会社側が持つCM枠、近年伸長しているアドレサブルなCM枠(視聴者毎に異なるCMが流れる仕組み)などもありますから、全体に占めるCM量が徐々に増えてきた背景があったようです。
近年どうやら米国では、CMのひとつひとつの付加価値をもっと高めて、番組内でのCM量を減らしていこうとする動きもあるようですが、現在の日本国内のテレビ放送ではそこまでのCM量はありません。特に視聴者が多い時間帯(プライムタイム)では、先の18%という上限の他にさらに基準があるからです。下記が民放連サイトからの抜粋引用です。
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週間のコマーシャルの総量は、総放送時間の18%以内とする。
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プライムタイムにおけるコマーシャルの時間量は、以下を標準とする(SB枠*を除く)。ただし、スポーツ番組および特別行事番組については各放送局の定めるところによる。(注)プライムタイムとは、局の定める午後6時から午後11時までの間の連続した3時間半を言う。
番組の長さ | CM時間の上限 |
5分以内の番組 | 1分00秒 |
10分 〃 | 2:00 |
20分 〃 | 2:30 |
30分 〃 | 3:00 |
40分 〃 | 4:00 |
50分 〃 | 5:00 |
60分 〃 | 6:00 |
60分以上の番組は上記の時間量を準用する。 |
(1)タイムCMには、音声(言葉、音楽、効果)、画像(技術的特殊効果)などの表現方法を含む。
(2)演出上必要な場合を除き、広告効果を持つ背景・小道具・衣装・音声(言葉、音楽)などを用いる場合はコマーシャル時間の一部とする。
*SB枠:ステーション・ブレイク(略してステブレ) テレビ番組とテレビ番組の間に流れるテレビCM枠のこと
もっと詳しく放送基準をご覧になりたい場合は、下記のリンクからご参照ください。
<日本民間放送連盟 放送基準>
https://www.j-ba.or.jp/category/broadcasting/jba101032#hk18
実際に放映されているCM量は?
なるほど、基準はわかりました。しかし、これらの基準をすべて合わせみて、一般的なプライムタイムの1時間のCM量を計算してみると、「54分番組」(CM6分)+「5分番組」(CM1分)+SB枠(CM1分)で8分間にしかなりません。1時間に対する比率で13.3%ということになります。他の時間帯のCMが多いのでしょうか?
そこで、実際に放送されたCM量がどれくらいであったかを独自に調べてみました。下図の参考例では、2020年上期(関東地区A局)のとある1週間のCM総量は29.5時間でした。(もちろん民放連の基準値の中には収まっています)そのうち、番組提供枠*(タイム)は7.7時間(26.2%)、スポットCM枠は17.7時間(59.7%)、残り14.1%は番宣枠(番組宣伝枠)。すべてを15秒CMで本数換算した場合は、タイムが約1,850本、スポットが約4,200本という集計結果になりました。(ただし、タイムは通常30秒CM素材が多い)
したがって、テレビCMのプランニングを行う際には、これらの比率も頭に入れておく必要がありそうです。さらに、スポットCMではPT*/SBの区分もあるためなおさらです。
*PT:Participating commercial(番組時間内のCM)
テレビCM とは〜視聴率とルールの話
テレビCMの種類別比率
最後に、時間帯、曜日別(平日と土日)でまとめた比率表をご紹介しておきます。時間帯ごとのCM量のほかにも、タイムとスポット比率も時間帯で大きく異なり、深夜になるほど番宣枠が多くなっているようです。
・CM種別比率表① <1週間での集計>
・CM種別比率表② <平日(月〜金)での集計>
・CM種別比率表③ <土日のみの集計>
以上、今回は「テレビCMの量がどれくらいあるの?」を調べてみました。テレビCMのプランニングやバイイングを行う際の参考になればと思います。さらに詳しくお知りになりたい場合は、プログラマティカまでご相談ください。
Programmatica Inc.
楳田 良輝|Yoshiteru Umeda